父の香りがするジュエリーたちへ。
引き出しの奥に、大切にしまわれていたものがある。
パールやオパール、シトリン、スモーキークォーツのカフスとタイタック、タイバー、そしてアメシストのルース。どれもお父様がかつて身につけておられたものなど。男性のアイテムが多く、ご自身ではなかなか使えないまま、静かに眠っていた。

「これらで、1つのブローチを作りたいんです」
そう話してくださったとき、ジュエリーたちと目が合ったような気がしました。
以前は決まった職人さんにリフォームをお任せされていたお客様。でもその方が引退されてから、しばらくどこにも出せずにいた。大切なものだから、簡単には預けられない。そんな中、440showroomへ足を運んでくださいました。
お預かりしてから、しばらくジュエリーたちを眺め続けた。
ご要望は「石たちが散りばめられるように。ボリュームがありながら、軽やかに」。ジャケットの多いお仕事柄、きちんとした場でもふだんでも使える1点に。右胸に付けたいとのことでしたので、右へ右へと世界が広がっていくような雰囲気に作りたいと思いました。
選んだモチーフは、「シンフォリカルポス」。
北アメリカ原産の落葉低木で、秋になるとパールのような白い実をたわわに実らせる植物。葉が落ちた後も、白い実だけが枝に残り、冬の間もその美しさを保ち続ける。花言葉は「いつまでも献身的に」。いつもそっと傍にいてくれる存在に贈りたい花、とも言われる。
引き出しの中で眠っていた宝石たちと、お父様への想いが、この植物にかさなりました。

中心に据えたのは、大ぶりなオーバルカットのアメシスト。深い紫が、この作品の心臓部になる。このアメシストはお父様がお母様へ贈られたものだったそうです。夫から妻へ、そして娘へ。石が繋いできた時間の重さを、あらためて感じました。
茎が伸び、上の枝には明るいシトリンとオパール、下の枝には深いオレンジ色のシトリンとオパール。右下にはスモーキークオーツが、根を張るように座っている。
そして左側に、この作品の一番の見どころ。シンフォリカルポスの実を、パールで表現しました。大小さまざまなパールが枝の先からこぼれ落ちそうに、立体的に連なっている。
プラチナの葉は、風にそよぐようにいろんな角度へと広がり、石と石の間に呼吸をつくっている。
全長約7センチ。写真では伝わりにくいけれど、1本1本の枝が異なる高さをもち、本物の植物のように空間に立体的に広がっています。手に取ったとき、そのことに気づいていただけたら。


実は今回、デザイン案を2パターンご提案しました。もう1案の、三角形のフォルムを用いたモダンなデザインも、現在別のブローチとして進行中。2つの物語が、それぞれの形で生まれようとしています。
納品の日、喜んでいただけたことが嬉しかった。そしてしばらく後、また440showroomへ足を運んでくださった。新しいブローチのご相談で。その時に言っていただいた言葉が、
「大森さんの空間の使い方が好きなんです」。
長年お願いしていた職人さんが引退されてから、ずっとどこにも出せずにいたと聞いていただけに、その言葉がとても嬉しかった。リピートしてくださること自体が、何より正直な感想だと思っています。
右の胸元に留めたとき、植物は右へと広がっていく。そこにはお父様のパールが、オパールが、アメシストが、新しい姿で息を吹き返している。
「いつまでも献身的に」というシンフォリカルポスの花言葉のように、お父様のジュエリーたちはこれからも、あなたの傍に在り続ける。形を変えて、でも確かに。
引き出しの中ではなく、あなたの胸の上で。
次回は、同じお父様のジュエリーから生まれた、もう2つの作品をご紹介します。赤い石のカフスとタイタックが、ピアスとブローチへ。
パールとカラーストーン ブローチのリフォーム
アイテム:ブローチ
素材:Pt
宝石:パール、アメシスト、シトリン、オパール、スモーキークォーツ
制作:約3ヶ月
費用:814,000円(税込)
デザイン:大森香菜江
※本記事でご紹介しているジュエリーは、制作時期と投稿時期に差があるため、地金価格や宝石の相場変動により費用が異なる場合がございます。また、宝石の大きさ・サイズ・デザイン内容などもお客様ごとに異なるオーダーとなります。
なお、今回はお客様のお持ち込み地金を下取りさせていただき、上記費用から差し引かせていただいた金額でのご精算となっております。
リフォームやオーダーメイドのご相談は、ご予約制にて半蔵門の440showroomで承っております。ご来店前にご不安な点やご質問などがございましたら、どうぞお気軽に公式LINEよりお問い合わせください。
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