「使っていないブラックパールのネックレスがあるんです」と。
ご遠方のお客様からご連絡をいただきました。
最初は「シンプルなネックレスかなぁ」という、ふわりとしたイメージからのスタートでした。それで十分です。ぼんやりとしたことばのなかに、その方らしさが宿っています。
まずはパールの大きさを確認していただくところから。約10mmでした。
以前リフォームしたパールジュエリーのお写真をご覧いただきながら、お客様もインターネットでイメージを探してスクリーンショットを送り合って——ご予算と大まかな方向性を決めたあと、お手持ちのネックレスをお送りいただきました。

パールを外してみると、わずかに楕円状の形をしていました。完全な丸ではない、この個性が後のデザインにとって大切な鍵になります。


デザインを詰めていくなかで、ふとお客様から。
「そういえば私、お着物とか和柄がすごく好きなんです。でもジュエリーで和柄ってなかなか見かけませんよね」
その一言で、霧が晴れるようにデザインの方向が決まりました。
和柄で進めましょう、と。いくつかの候補のなかから選んだのは、七宝(しっぽう)。
— 七宝文様について
円を四方八方に連続させた、日本の伝統的な吉祥文様です。仏教の教えに由来し、金・銀・瑠璃・玻璃・珊瑚・瑪瑙・硨磲という七種の宝にちなんだ名前。円と円がつながりながら広がるそのかたちは、縁が縁をよぶ——人とのつながり、円満、無限の広がりを象徴するとされています。どこまでも途切れることなく続いていく、祈りのような文様です。

10ミリのブラックパール上部を、七宝柄が4方向から包み込むように設計しました。楕円状のパールだからこそ、上部に柄を被せることでドロップ型のシルエットがより際立ちます。パールと対話するような、そういう時間が好きです。

制作途中、お客様からご要望をいただきました。
「あまりきらびやかにしたくない。シンプルな印象にしたい」
最初のご希望と、ぶれていない。そのまっすぐさが、作品に宿ります。
だからこそ、ダイヤモンドの置き方にこだわりました。正面からは七宝柄が凛と立ち、斜めに傾いたとき、はじめてダイヤモンドがきらりと光る。
主役はパールと七宝柄。ダイヤモンドは「気づいたら、宿っていた輝き」として支えに回ります。
ダイヤモンドは、元のペンダントトップに留まっていたものを再利用しています。バチカンにもダイヤをあしらい、お客様のお手持ちのチェーンをそのままお使いいただけるよう仕上げました。


仕上げはホワイトゴールドを選びました。
ブラックパールは、見る角度や光によって、緑のような、赤のような、紫のような——複雑な色艶を持っています。ホワイトゴールドの清廉さが、その色みを遮らず、むしろ際立たせる。珠の照りが、正面に出てくる仕上がりになりました。
シンプルながら、よく見ると七宝の円がどこまでも連なっている。和洋折衷の、お客様らしい一粒になりました。

完成したペンダントトップは、丁寧に梱包してお客様のもとへお届けしました。
しばらくして、お便りが届きました。
「ネックレス届きました。ありがとうございます。めっちゃステキで可愛いです!」
ご遠方のお客様だから、お顔を見てお渡しすることはできません。でもそのお便りが、確かな手応えになりました。またいつか、ぜひ着用した姿を見せてくださいね。
パールペンダントトップのリフォーム
アイテム:ペンダントトップ
素材:K18ホワイトゴールド
宝石:約10mmパール、ダイヤモンド
制作:ご相談いただいてからご納品まで約4ヶ月
デザイン:大森香菜江
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