こんにちは、デザイナーの大森です。
ただいま 440showroom では、AW2025 新作発表会の真っ最中。
半蔵門の440showroomに “小さな森” をつくるような気持ちで、パールで仕立てた鳥たちを自由に飛び交わせています。
一羽一羽、表情もかたちも違う一点もののジュエリーたち。
その輝きが、誰か一人の心に深く残るような──
そんなジュエリーを生み出していけたらと願っています。
今日は、そんな私たちの想いに共感してくださるお客様からの、パールピアスのリフォームストーリーをご紹介します。
大粒すぎて、ちょっと困ったパールリング
お持ち込みくださったのは、約11mmの大粒パールリング。
「とても素敵なんですけど、立派すぎて普段には使えなくて…」
と、お悩みを打ち明けてくださったお客様。

いつも仲良し3人組で遊びに来てくださるお客様は、この日もご友人お二人と一緒にご来店くださいました。
「そういえば、ずっと前に見ていいなと思っていたピアスがあるの」
と、ご友人の一人がスマホの写真を見せてくださったのが、今回のリフォームのきっかけでした。
一枚の写真から、「これにします!」と決まったデザイン
画面に写っていたのは、パールを大胆に“半分にカット”してつくったようなデザインのピアス。
「面白い!」「これ、絶対似合う!」
その場はあれよあれよと盛り上がり、
「もう、これにします!」とあっという間に方向性が決まりました。
…が、デザイナーとしては、ここからが少しドキドキのスタートです。
お持ち込みのパールリングと、参考に見せていただいたピアスの写真を見比べると、いくつかの不安要素が頭をよぎりました。
たった一粒しかないパールを「半分にカット」するということ
まずは何よりも、大ぶりの丸いパールを“半分にカットしなくてはならない”ということ。
「もったいないのでは?」という気持ちもよぎります。
ですが、お客さまは今のリングのままだときっとあまり出番がない。
「このパールを今の暮らしの中で、ちゃんと活躍させてあげたい」
その想いを伺うと、
思い切って形を変えることも“もったいなくない選択”だと感じました。
販売用の半球パールのピアスは、
たくさんある中から「カットに成功したきれいなものだけ」を選び抜いて製品にしています。
けれど今回のパールは、世界にひとつ、お客さまだけのもの。
- カットが必ずしもきれいにいくとは限らないこと
- やり直しがきかないこと
この2点を、しっかりと時間をかけてご説明しました。
それでも、
「それでもいいので、この子をぜひピアスに生まれ変わらせてください」
と、まっすぐにおっしゃっていただき、
「はい、では私も全力でお手伝いしますね」
と、お預かりすることになりました。
カットは成功。でも、左右の厚みに差が…
職人と緊張しながら進めた、カットの工程。
無事に二つの半球に分かれたものの、実際に測ってみると、左右でわずかにパールの厚みに差が出てしまいました。

こういった“誤差”は、手作業で行うとどうしても起こりうること。
そこで一旦制作をストップし、今の状況を正直にお客さまへご報告しました。
そのうえで、
「厚みの差を感じさせないように、土台のプラチナ側で調整をしていきませんか?」
とご提案し、デザイン案を再度丁寧に共有しながら、先に進めていくことになりました。
プラチナの土台で“差”を包みこむ工夫
今回のピアスは、
- 半球側のパールのテリ(ツヤ)をしっかり楽しめること
- カットした平らな面には、すき間なくダイヤモンドをパヴェセッティングすること
この2つが大きな特徴です。
左右の厚みの差を目立たせないよう、プラチナのベース部分で「沈ませる深さ」を一つ一つ変えて設計しました。
見た目には、どちらのパールも同じボリューム感に見えるように。
裏側で、こっそりと細かな調整をしています。
こうして、パール・プラチナ・ダイヤモンドが、それぞれの役割を持ちながら、ひとつのピアスの中で調和する形になりました。

表も裏も主役。気分で変えられるリバーシブルデザイン
完成したピアスは、向きによって表情が変わる “リバーシブル仕様” に。
- 正面からは、ふっくらとした半球パールとプラチナのやわらかな輝き
- 耳の外側(または内側)からは、丸いパールとぎゅっと敷き詰めたパヴェダイヤモンドの繊細で力強いきらめき
リバーシブルで楽しめるようにお仕立てしています。
「パールが主役」の日もあれば、
「今日はダイヤのキラキラを見せたい」という日も。
その日の装いと気分に合わせて、さりげなく向きを変えて楽しんでいただける、唯一無二のピアスになりました。




いちばん緊張した工程と、お客さまのひと言
やはり一番緊張したのは、お客さまにとってかけがえのないたった一粒のパールをカットする工程でした。
結果的に厚みは完全な均一にはなりませんでしたが、その“個性”をプラチナの設計でそっと受け止めることで、
「パール」と「ダイヤ」と「金属」
それぞれが美しく響き合うピアスに仕上がり、心からホッとしました。
そしていよいよ、お客さまとピアスのご対面の日。
何度も手にとって、パール側とダイヤ側をくるくると見比べながら、
「大変なお願いをしてしまってごめんなさい。でも、おかげで本当に満足のいく仕上がりになりました」
と、とても嬉しそうにお話しくださいました。
その後、Evenceネックレスとの“おそろい”へ
しばらくしてから、同じようにパヴェセッティングを施した Evence - Harmony ネックレス を、ピアスに合わせてお迎えくださいました。

最初はドキドキしながらスタートした今回のリフォームでしたが、
このお仕立てを通して、私たちの技術や表現の可能性が、またひとつ広がったように感じています。
本当に、ありがとうございます。
「たった一人の感動」が、次のものづくりにつながる
日々、お客さまとの何気ない会話や、「実はこんなことに困っていて…」というご相談から、
ジュエリー作りのヒントや、新しい発想のきっかけをたくさんいただいています。
昨日よりも今日、今日よりも明日。
たった一人の方が心から感動してくださるものづくり を、これからも続けていきたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
パールやダイヤモンドのリフォームについても、どうぞお気軽にご相談くださいね。
それでは、次回のグログもお楽しみに。
パールピアスのリフォーム
アイテム:ピアス
素材:Pt
宝石:パール約11mm、ダイヤモンド
制作期間:約3ヶ月
費用:484,000円
デザイン:大森香菜江
※本記事でご紹介しているジュエリーは、制作時期と投稿時期に差があるため、地金価格や宝石の相場変動により費用が異なる場合がございます。また、宝石の大きさ・サイズ・デザイン内容などもお客様ごとに異なるオーダーとなります。
なお、今回はお客様のお持ち込み地金を下取りさせていただき、上記費用から差し引かせていただいた金額でのご精算となっております。
リフォームやオーダーメイドのご相談は、ご予約制にて半蔵門の440showroomで承っております。ご来店前にご不安な点やご質問などがございましたら、どうぞお気軽に公式LINEよりお問い合わせください。
▶ [LINEで相談する]
▶ [ご来店予約はこちらから]
