皆様こんにちは。
デザイナーの大森です。
記憶、思い出、ぬくもり、香り――日々の暮らしの中で、ふとしたきっかけから心の奥底に眠っていた記憶のピースがはまり、鮮明になる瞬間があります。
今回ご紹介するカメオのリフォームも、まさにそんな瞬間から始まった物語です。
ある日、InstagramのDMでこんなご相談をいただきました。
「子供の頃、父からヨーロッパ出張のお土産としてもらったカメオのネックレスを、今後お祝いの席などできちんとした装いの日に使えるブローチにリフォームしたいと思っています。ただ、本物のカメオではないかもしれないのですが、それでも加工は可能でしょうか?」
お客様は私たちの過去のリフォーム事例をご覧になり、連絡をくださったようです。
そして、ご自身でじっくり考え抜いたブローチのデザイン画をお持ちいただいてのご相談でした。
長い時間をかけてじっくりと練られたそのデザインには、細部までこだわりが詰まっていて、見ているだけでお客様の熱意が伝わってきました。
その想いを受け取って、私もこのプロジェクトに全力で向き合おうと決意した瞬間でした。
まずはカメオネックレスを拝見するため、ご予約の上でご来店いただきました。
カメオの周囲の素材はジュエリーとして一般的ではなく、加工できるかどうか少し悩む部分もありました。
しかし、お客様の希望するデザインやコンセプトにふさわしい方法を見つけ、カメオを囲む枠をそのまま活かしたデザインで進めることにしました。
リフォーム前のカメオネックレス
お客様のご希望案は、カメオの周りに放射線状に広がるゴールド、そこへパールをランダムに散りばめるというもの。
お祝いの席やフォーマルなシーンに合うよう、華やかでモダンな印象になるよう細部まで慎重に調整しました。
デザインの最終案では、大切なカメオの魅力と思い出を最大限に引き出すため、アンティーク調の装飾をそのまま残し、外枠にはランダムに広がるゴールドのラインを加えました。
パールはアコヤと淡水パールをミックスし、白、ピンク、イエロー、グレー、黒といった多彩な色味とサイズをランダムに配置。
リフォーム後のカメオブローチ
これにより立体感が生まれ、カメオのオレンジ色やゴールドとの調和が取れた気品あるデザインに仕上がりました。
完成したブローチは縦約5cm弱、横約4cmと、存在感のある仕上がりに。
リフォーム後のカメオブローチ
お客様に完成品をご覧いただいた際、大変ご満足いただけました。
お客様にとってお持ち込みいただいたカメオネックレスは、幼少期の思い出が詰まった大切な一品。
小学生の頃、ピアノの発表会でつけてほしいと、父がエアメールと共にプレゼントしてくれたお品だったのです。
大人になり整理していた際にそのエアメールを見つけ、再びその存在に気づかされたそうです。
「父の優しさを改めて感じ、このカメオを今度は息子の晴れの日に身につけたい」 そんな想いが込められたリフォームをお任せいただけたこと、本当に光栄に思います。
リフォーム後のカメオブローチ
リフォームは単にデザインを作り変えるだけではありません。
それは、思いや記憶をそのジュエリーに宿し、現代のライフスタイルに合った形で新たに生かすこと。
そして、身につける方が愛用できるようになるまでをサポートする、大切なプロセスです。
このような素敵なストーリーを紡ぐお手伝いができたこと、心から感謝しています。
そして、リフォームを通して甦った記憶や思い出、ぬくもり、香りが、これからもお客様とそのご家族の中で輝き続けることを願っています。
実はカメオブローチと同時に2つのピアスリフォームもお任せいただいておりました。
このピアスの物語は次回のブログで。お楽しみに。
カメオブローチのリフォーム
アイテム:ブローチ
素材:K18
宝石:アコヤ、淡水パール
制作期間:約3ヶ月
デザイン:大森香菜江